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2021/11/05

電子インボイスとシステムへの対応 ~システム追加改修の必要性~

デジタルインボイス(Peppol)
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本記事は2021年11月時点のものです、最新はこちらを御覧ください。

  1. 国税庁が動画で示す電子インボイスとは
  2. インボイス通達が示す電子インボイスとは
  3. インボイス発行事業者の4つの義務
  4. 電子インボイスに対応するための新たな確認事項
  5. 電子インボイスが注目を集めている理由
  6. Peppol(ペポル)による標準化と社内システムの改修
  7. インボイス制度・適格請求書発行事業者公表サイトの活用

国税庁では「特集 インボイス制度」のWebサイトを開設し、インボイス制度への理解を深める取り組みが多くなってきました。このWebサイトの中には「インボイス制度のオンライン説明会」の案内もあり、筆者も受付開始時刻と同時に申し込みをしましたが、直ぐに「申込みの上限に達したため、現在申込みを停止しています」という状態になりました。

こうした関心の高さと共にインボイスへの理解が高まっていくと、インボイス制度に対応するには、既存の手作業を含めた経理業務では追いつかない、ということも分かってくると思います。こうした背景もあり、今注目を集めているのが、電子インボイスです。今回は、国税庁が示す電子インボイスとは何か、また電子インボイスへのシステム対応について考えてみたいと思います。

国税庁が動画で示す電子インボイスとは

国税庁の「特集 インボイス制度」のWebサイトには、「国税庁動画チャネル(YouTube)」も用意されています。この国税庁動画チャネルの中には、「消費税!今から学ぼう!インボイス塾!」という、ビックリマークが3つも付く動画が全4回シリーズで配信されています。

この動画チャネルで説明されている電子インボイスとは、以下の図のとおり「インボイスは紙での交付に代えて電磁的記録つまり電子データで提供することができます。この電子データのことを電子インボイスといいます
という説明になっています。

また電子インボイスの保存に関しては、次の説明を加えています。「電子インボイスは、電子データのまま保存することができ便利です」「この場合は、電子帳簿保存法に定める方法に準じて一定の措置を講じて保存する必要があります

この電子インボイスの保存には、電子帳簿保存法に準拠した保存が必要になるということは、当然、電子帳簿保存法を理解することが求められている、ということになります。

今までは、ともすれば電子帳簿保存法は、電子帳簿保存法を税務署に申請する事業者だけが理解していれば良いと思われがちでしたが、今後は電子インボイスを取り扱うならば、電子帳簿保存法が定める保存要件なども理解しなければならない、ということになります。

インボイス通達が示す電子インボイスとは

国税庁の動画チャネルで示されているように、紙のインボイスに代えて電子化した請求書・領収書・納品書等の電子データが全て電子インボイスです。

インボイス通達*で示される電子インボイスとは、光ディスク、磁気テープ等の記録用の媒体による提供のほか、次に掲げるようなものが該当する、と記載されています。

(1) いわゆるEDI取引を通じた提供
(2) 電子メールによる提供
(3) インターネット上のサイトを通じた提供

*国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関する取扱通達の制定について(法令解釈通達)

またインボイスには、適格請求書(請求書・納品書・領収書等)、適格簡易請求書(レシート等)、適格返還請求書(販売奨励金支払明細書等)の3種類があるので、実態としてはこれらの書類が電子データ(電磁的記録)となった電子インボイスを上記(1)~(3)の提供方法で取引先とやり取りすることになります。

インボイス発行事業者の4つの義務<

国税庁動画チャネルでは、「インボイスとは、売手が買手に対し正確な適用税率や消費税率を伝えるための手段」であり、「登録番号や消費税額などの一定の事項が記載された書類や電子データ」であり、インボイス発行
事業者には一定の義務が生じる、と記載されています。


換言すれば、登録番号などを記載した請求書・納品書等の電子データである電子インボイスを発行する場合、発行事業者に課される義務がある、ということです。この義務とは、以下のことです。

【インボイス発行事業者の義務】
① 課税事業者である取引の相手方の求めに応じインボイスを交付する義務
② 値引きなど対価の返還を行った場合、適格返還請求書いわゆる返還インボイスを交付する義務
③ 交付したものに誤りがあった場合、修正した適格請求書いわゆる修正インボイスを交付する義務
④ 交付したこれら(①~③)を保存する義務

電子インボイスに対応するための新たな確認事項

複数の消費税率ごとに仕入税額控除の計算を適切に処理していくことは、インボイス制度になっても変わりありません。しかしインボイス制度になり、電子インボイスをやり取りするようになると、前記の制度上の義務に加えて、例えば以下のような突合・確認作業が、買い手・売り手ともに必須になってきます。

特に電子メールで受領する請求書や納品書では、電子化ならではの確認と対応(電子帳簿保存法に準拠した保存要件等への対応)が必要です。

【電子インボイスの確認事項・例】
(1) 電子データで受領した請求書・領収書等は、適格請求書としての記載要件を全て満たすデータなのか
(2) 電子インボイスの種類(適格請求書、適格簡易請求書、適格返還請求書)は、どこを確認して分類するのか
(3) 一通で電子インボイスとなる請求書なのか、複数の納品書等のデータと合わせてインボイスとなるものか
(4) 免税事業者の請求書ではないのか、あるいは「いつ免税事業者から適格請求書発行事業者になったのか
(5) 適格請求書発行事業者の名称等の情報は「インボイス制度・適格請求書発行事業者公表サイト」と同一か
(6) 電子インボイスは改ざんされていないか
(7) 電子インボイスの他に紙(書類)の請求書・納品書も受領していないか
(8) 受領した電子インボイスの保管対象は何か(メール本文、添付PDF、取引サイトのCSV、ハードコピー等)
(9) 免税事業者の経過措置は、(4)の確認結果と連携して正しい経過措置期間内による控除率を適用しているか

上記の確認例の他にも、実務的には、まだまだ各種チェックが必要です。

電子インボイスが注目を集めている理由

インボイス制度は、そもそも消費税が8%と10%の複数税率となったことに伴い、適正な消費税の仕入税額控除を行うことを目的に制定されたものです。

請求書、納品書などの書類に、軽減税率対象品目があればこれを明示し税率ごとの合計金額を記載しなければなりません。この税率ごとの区分経理による取引の透明性と正確な経理業務を日々実施するだけでも、大変な作業です。こうした現状に加えて、インボイス制度では現行の区分記載請求書等保存方式に加えて、前記の4つの義務などが加わっていることになります。

更に現行制度とインボイス制度の大きな違いの1つは、免税事業者との扱いです。現行の区分記載請求書等保存方式では、買い手である免税事業者との取引においても仕入税額控除を受けることができますが、インボイス制度になると、国税庁に登録した登録番号を保有し、適格請求書発行事業者となった課税事業者が発行したインボイスだけが仕入税額控除の計算対象となることです(但し経過措置あり)。

登録番号の無い免税事業者からの請求書等では仕入税額控除が原則受けられなくなるので、どの請求書や納品書が免税事業者のものか確認する必要が生じます。

現状市販されている会計ソフト等では、こうしたインボイス制度に基づく適格請求書としての確認や分類を全て自動化し、電子メールや各種サイト上の請求書・領収書等も自動的に帳簿に取り込んで仕訳入力から仕入税額控除の計算や入金消込まで完全に自動化できるものは見当たりません。

仮に「インターネット上のサイトを通じた提供」であるWeb-EDIサービスを採用しても、取引先の全てが同じシステムサイトのサービスを利用するとは限りません。

つまり一口に電子インボイスといっても、その規格や種類は様々なので、電子インボイスで経理業務の効率化を図るといっても、実際は、各会計ソリューションベンダのサービス契約を複数締結せざるを得ない、というのが現段階の実態です。

こうした事態を極力避けるために、今、日本の法令や商慣習を反映した標準化・規格化が検討されています。

今、電子インボイスが注目を集めている理由の1つは、このようなインボイス制度に変更されることで、新たに追加される業務負荷を、標準化された電子インボイスの活用によって軽減できないのか、という期待があるからです。

Peppol(ペポル)による標準化と社内システムの改修


電子インボイス推進協議会(EIPA:E-Invoice Promotion Association・エイパ)では、デジタル庁などと共に、日本の電子インボイスの標準仕様について協議しています。EIPA(エイパ)では標準規格として「Peppol(ペポル)」を選定し、現在、日本の各種法令や商慣習に対応した「日本標準仕様」を検討・策定しています。

EIPA(エイパ)が目指す方向性は、電子インボイスの仕組みを通じて、デジタルの請求書等で国内外の取引相手とオンラインで円滑に授受し、単なるペーパーレスだけではなく、経理業務のプロセスの自動化を図ることによって、請求・支払業務、入金消込などの決済に至るまでの効率化を図ることです。

こうした電子インボイスの標準化・規格化が実現されれば、取引先が異なるシステムを利用していても、請求書データの自動取り込みから始まって、確認・分類作業をはじめ、仕入税額控除の計算も自動化が期待されます。
また電子インボイスは、国内外の商取引にも対応できるグローバルな仕様が求められています。欧州やオーストラリア、シンガポールなどはPeppolによる電子インボイスが導入されています。

ただし世界の電子インボイスは、Peppol(ペポル)だけではありません。例えば米国は、Peppolとは異なるフレームワークとアーキテクチャー*で米国での統一規格のシステム化を目指しています。

参考*The Business Payments Coalition (BPC)

そのため一口に「国内外の取引相手と円滑に授受する」と言っても、オンラインで海外の取引先と電子インボイスを授受するためには、欧州、オーストラリア、シンガポール等のPeppolや、米国等の他の電子インボイスを相互流通させる仕組み**も将来的には必要になってくると思います。

参考**Global Interoperability Framework (GIF)による相互運用の例

Peppolの仕様を管理しているOpenPeppol*は、ベルギーの法律に基づく非営利の国際的な組織(協会)で、公共部門と民間会員の両方で構成されています。日本もデジタル庁をはじめとする官側とEIPA(エイパ)をはじめとする民側との官民連携で、今後インボイス文書構成、ネットワーク接続、運用ルールなどを定めていく予定です。

参考*OpenPeppol is a non-profit international association under Belgian law (Association Internationale Sans But Lucratif – AISBL) and consists of both public sector and private members.

しかし先行する電子インボイス導入各国(先ずはPeppol導入国)との互換性を確保しつつ、日本の商習慣にも対応した電子インボイスを規格化し、更には(海外との取引先を持つ)中小事業者でも導入が容易で、それなりのコストで利用できるようにするまでには、相当な時間がかかる見込みです。

したがって電子インボイスのユーザ企業としては、先ずは足元の社内システムと取引先とやり取りの多い電子インボイスをシステム化の優先対象として、システム連携をどう実現していくのか、具体的には販売管理システムや電子メールの取引情報を、どう会計システムに自動化し電子帳簿保存法に準拠した保存ができるのか、ここを考えていくことから経理業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)が始まります。

インボイス制度・適格請求書発行事業者公表サイトの活用

適格請求書発行事業者公表サイトでは、令和3年11月1日(月)10時から、登録番号による検索機能、データダウンロード機能、Web-API機能がリリースされました。

下記は弊社の公表例ですが、法人番号の公表サイトとの違いは、登録番号には法人番号の前にTが入っていることと、登録年月日が明記されているところが表示上の主な違いとなります。

この公表サイトの情報は、単に取引先がインボイスの発行事業者であるかどうかを確認するだけではなく、例えば、現在は免税事業者である取引先事業者が、いつ適格請求書発行事業者になったのかを「登録年月日」で確認することも出来ます。そのため、今後はWeb-API機能などによって、適格請求書発行事業者公表サイトを定期的にクローリングし、取引先事業者の状態を確認することも必要になってくると思います。

また将来的には、電子インボイスに適格請求書発行事業者の情報である電子署名(eシール)を付与することが総務省などで検討されています。ただしトラストアンカーやeシールのサービス需要が定まらない現状では、こうした電子インボイス発行事業者の真正性を確認するサービスは、もう少し先になりそうです。

そのためeシールシステムの適用検討よりも、この適格請求書発行事業者公表サイトと連携した適格請求書の保管管理方法を検討することが先決です。

またインボイス制度では金額にかかわらず全ての適格請求書が7年間の保存が義務づけられています。電子帳簿保存法に定める方法に準じて一定の措置を講じて7年間保存するためのシステム検討が必須となります。

こうした新たなシステム化への対応準備は、最近の国税庁の資料でも明確に広報するようになってきました。
国税庁の動画チャネルでは「請求書作成システムの改修などが必要になることもあります」という記載ですが、インボイス制度に伴う業務の効率化を考えれば、システム改修は必須と言えると思います。

しかも、こうしたシステム化を含む対応は「お早目に検討準備いただきますよう よろしくお願いします」という事業者向けの依頼も入っています。

今回ご案内した電子インボイスに対応する多岐にわたる事前確認項目を、どうシステム対応していくのか、こうしたシステム化への検討準備は、確かに早めに準備する必要があります。

弊社ではPeppolアクセスポイントにおけるテストも完了しています*。
「Peppolを用いた電子取引は、Peppolアクセスポイントを介して、Peppol eDelivery Networkに接続し、注文や請求書などのビジネスドキュメントを処理、送受信が可能になります。ファーストアカウンティングは、すでにアクセスプロバイダーに必要とされるPeppolアクセスポイントにおけるテストを完了しています。」

参考*日本標準仕様の電子インボイスを見据え、Peppolに対応したサービス準備へ

この他にも経理業務に特化した弊社の各ソリューションは、今回のインボイス対応の検討準備にも充分寄与できるものと確信しています。どうぞお気軽にお声掛けください。

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